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2012/12/17

ペリドット(川流れ)


ペリドット Peridot
Sappat, Naran-Kagan Valley, Kohistan District, Pakistan



フローライト?アクアマリン?
イエス!ペリドットです。
秋のオークションに出品させていただいた珍品、半透明ペリドット(オリビン)。
ペリドットとしては大きすぎる。
すりガラスのような質感はまるでフローライトのよう。
予備知識無しにペリドットとわかった方はおられるだろうか。
川流れ(→ブルートパーズ)なのか蝕像(→スモーキークォーツ)なのか、それとも他に原因があるのか。
当初は全くわからなかった。

珍石好きの自分にとってペリドットは、あまり縁の無い鉱物だった。
多くは小さな粒や欠片となって流通しており、原石標本より加工品が一般的となっている。
色合いや形状にこれといったヴァリエーションはなく、宝石に磨いてしまえば皆同じ。
8月の誕生石として知られるペリドット。
1月のガーネットや10月のトルマリンがいくら集めても終わらないのに対して、ペリドットはひとつあれば十分。
例外としては隕石に含まれる、いわゆる宇宙ペリドット。
情けないことに、私はそう認識していた。
甘かった。
いや、もしかしたらペリドットじゃないかもしれない。
そんな疑いの気持ちを抱いてしまうほど見事な、大粒のペリドット単結晶。

私はつくづく幸運だと思う。
オークションでこのペリドットを落札してくださった方は、なんとペリドットを専門に探求されている人物であった。
可能性については、川流れではないかというお話。
川流れペリドットというのは初耳である。
また、現地からはこれとそっくりの質感を持つ標本が相当量見つかっているようだ。
しかし、よくよく調べてみるとこのペリドット、どうも河川の流れによって下流に運ばれた土壌(沖積/ちゅうせき)の中から見つかるらしい。
熱水などの侵食を受けたものと思い込んでいたが、川を流れるうちに削られて変形していったと考えるべきか。
さすがペリドット・マスター。
彼に出会わなければ、私は侵食をうけたエッチング・ペリドットだと信じ込んでいた。
これ以上ない幸運なご縁に感謝した。
ところがマスター、早速研磨してみるとおっしゃる。
私は心の中で叫んだ。

ええっ?磨いちゃうの!?

この質感こそがこの原石の個性であり、魅力に違いない…と思い込んでいた。
のちにこの考えもまた、誤りであったことに気づかされる。
楽しみ方は人それぞれ。
磨いてようやくわかる魅力というのもあるのだ。
専門的見解を伺い、研磨についても納得のうえ、お譲りできることになった。
そうして、このペリドットの片割れは、その方のもとへと旅立っていった。

数日後、ペリドットが無事に届いたとのご連絡をいただいた。
ペリドットに間違いない、とのこと。
本当にペリドットなのかという疑問から探求が始まるのは、誰も皆同じなのかもしれない。
しかしここにきて、マスターから驚くべきお言葉が聞かれた。
研磨するかどうか迷っておられるとのこと。
研磨を前提に購入いただいたはずだったから、何か問題があったのかと不安になった。
特に問題はないとのこと。
他の石とは雰囲気が違うのだが、何か特別なペリドットなのか?とのご質問をいただいたことが強く印象に残っている。
自分同様、スピリチュアルとは無縁の方だと思っていた。
目に見えない何かを感じ取られたことが伝わってきた。
その後については、わからない。
今頃あのペリドットはどうしているだろうか。

人それぞれ想いは違う。
石を集める目的も違う。
それが意図したものとは異なるからといって、売り手がそれを止めることがあってはならない。
自ら購入し、気に入って大切にしている人生初のペリドットの片割れ。
特別な思いが宿ってしまったのだとしたら、私に責任がある。
だが、それをもってしても、美しい。
産地はパキスタン北部、ノースウエストフロンティア地方、ザギマウンテンの東にある渓谷のよう。
見事な河川が流れている(→地図と写真)。
ピンと来た方もおられるかと思う。
現地はアフガン・インド国境付近、世界情勢に疎い自分にも一瞬にしてわかるほど危険な土地。
だとしたらここにもまた、無限の可能性を秘めた鉱物が人知れず眠っていたということになるのだろう。




20×14×10mm  4.91g


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