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2011/08/14

クリソコラ(セレナイト仮晶)


クリソコラ(セレナイト仮晶)
Chrysocolla after Selenite
San Manuel Mine, San Manuel, Pinal Co., Arizona, USA



乙女心をくすぐるパステルカラー!
その姿はまるでお菓子のよう!
森ガール?いいえ、クリソコラの針状結晶です。

説明しよう。
元々はセレナイト(石膏)という鉱物だった。
セレナイトの結晶形が保たれたまま、中身だけクリソコラと入れ替わってしまった。
本来、塊状で産出するはずのクリソコラが、何らかのきっかけで、セレナイトの如き針状結晶となって出現したものである。
このような珍石を、仮晶と呼んでいる。

仮晶とはつまり、結晶体のコピー。
幾つもの要因が重なって鉱物の成分が入れ替わる、もしくは結晶の表面を何らかの物質が覆って雛形となり、中身が入れ替わってしまうことにより生成される。
よく知られている仮晶としては、アジュラマラカイト(アズライト・マラカイト)など。
パワーストーンとしても有名だから、ご存知かと思う。
もともとは、アズライトだった。
長い時を経て、アズライトの一部がマラカイトに変化し、青と緑の混在する美しい石となった。
マラカイトの部分は、アズライトの仮晶ということになる。
ただし、アズライトとマラカイトは化学組成が同じ。
両者に連続性があるために、仮晶は半ば必然的に出来、大量生産が可能というわけ。

いっぽう、一回限りの産出というのもある。
同じ場所からまとまって発見されるが、その数は限られていて、掘りつくしてしまえばそれで終わり。
このクリソコラがそう。
30年ほど前のアリゾナにて、コレと同じような珍石がいくつか見つかったらしい。
それ以降、発見された記録はないそうだ。
このような突発的な仮晶は、特別な価値を付けられ高額で取引される。
歴史的コレクションとなって、収集家の間で受け継がれることも多い。
この標本も、もともとは諸外国のコレクターが所有していたものと伺っている。
コレクターは限定モノに弱い。
人類に共通の普遍的真理といえよう。

仮晶というのは実に奥が深い。
偶然が偶然を呼んで、その鉱物には本来あり得ないはずの形となる。
興味があれば調べていただきたいと思う。
ただし、収集癖を自覚する方は、手出ししないほうがいい。
仮晶の世界は無限ゆえ、深入りは危険である。
お気づきかもしれないが、私はもはや手遅れである。


25×16×13mm

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