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2013/01/11

イリスアゲート


イリスアゲート
Quartz var. Iris Agate
Rio Grande do Sul, Brazil



イリスアゲート。
以前からよく耳にしていたが、実物を見たことがなかった。
アゲートの中に極めて稀に現れるという希少石のひとつ、イリスアゲート。
日本でヒットを飛ばしたのは知っていた。
ところが、アゲート収集が盛んな欧米では、滅多に聴かないし、見かけない。
私にとっては謎の存在であった。
手にする機会のないまま、月日は過ぎていった。

ある日、お世話になった方と話していて、突然イリスアゲートの話題になった。
正直に告白する。
私にはサッパリわからなかった。
レアストーンハンターを名乗る以上、わからないでは済まされない。
一度、この目で確認する必要があるのだが、なんせ相場がよくわからない。
まずは一番お手頃な、イリスアゲートの原石なるものを購入してみた。

参考:ワイオミング州のイリス珪化木(参考例)
https://sites.google.com/site/wyomingrockhound/rocks-of-wyoming/wyoming-iris-agate

なんだかよくわからなかった。
どうも薄切りにしないと虹は見えないらしい。
厚さは5mm以下というから、私のような素人には到底無理である。
アメリカの知人に聞いてみた。
イリスアゲートは確かに存在する。
だが持っていない、とのこと。
あれだけアゲートの収集家がいるというのに、奇妙である。
いっぽう、国内サイトを検索すると、かなりの方がお持ちの様子。
数万分の一の確率で現れるという幻のイリスアゲートが、どうしてこれほどまでに話題に上り、流通しているのか。
いったい誰が流行らせ、広めたのか。

写真にあるのは先日、ようやく手にした薄切りのイリスアゲート。
思っていたより分厚い。
虹の見えるのは片面のみのよう。
スライスした瑪瑙を、虹の帯がぐるりと一周する。
これは確かに面白い。
光の干渉によるレインボーというのは理解できた。
強烈な太陽光の下よりも、室内光のほうがくっきり虹が見えるのは不思議ではある(写真は太陽光で撮影。必ずしもそうとは限らない)。
これを1mm以下の厚みにカットすると、驚くべきイリュージョンが楽しめるという。
あまりにペラペラでは取り扱いに困るから、ある程度厚みはあったほうがいい。
上質のイリスアゲートは全体に幻想的な虹が浮かぶ。
帯タイプについては、売れ行きの芳しくない着色メノウのプレートを探せば発見することが可能らしい。
イリスハンターたちが全国各地に生息、日々メノウプレートを物色しているというから、ただごとではない。

では、イリスアゲートはいったい誰が流行らせたのか。
2007年頃から徐々に話題になり始めているのは確認できた。
ならば2006年頃か。
なんと、2006年に記されたブログに、イリスアゲートの名があった。

参考:少年ジャンプのまとめサイトにイリスアゲートが登場(2006年4月 20号)
http://dreamwords.blog.so-net.ne.jp/2006-04-17

このとき『魔人探偵脳噛ネウロ』という漫画に虹瑪瑙(イリスアゲート)が登場したということであった。
ブログ主さんの解説によると、イリスアゲートについては当時、検索しても1件しかひっかからなかったとのこと。
その1件として挙げられているのは、国内の有名な専門サイトさま。


少年漫画を読まない自分にはよくわからない。
おそらく、当時この漫画を読んだ奴らは、いっせいにイリスアゲートをググッたとみられる。
そして上記のサイトを知った人々は、イリスアゲートを探し求めた。
需要は日々、高まっていった。
天然石/パワーストーンとしてのイリスアゲートの知名度も、別途上がっていったものと私は推測する。
というのも、2005年以前のネット上の記事に、イリスアゲートの名が見当たらないのである。
もしや、イリスアゲート日本上陸のきっかけは、少年ジャンプ?

ちなみに、上記の作品だが「まじんたんていのうがみネウロ」と読むらしい。
禍々しいタイトルに反し、作者の松井氏はわりあいイケメン(当時)のようである。
レアストーンを集めているようなふうには見えないのだが…
2006年といえば、私自身まだ鉱物に興味を持って間も無いから、状況は全くわからない。
ご存知の方がおられたら、是非お知らせいただきたい。
もしイリスアゲートがきっかけで鉱物に目覚めたという方がおられるのだとしたら、少年ジャンプは侮れない。

写真のイリスアゲートは、ブラジル最南端、リオグランデ・ド・スル州から発見されたもの。
瑪瑙の産地として知られる土地である。
多くの原石はスライスされ、青や緑に着色されてしまっている。
そんなメノウプレートの中に、キラリと輝くレインボーを見つけ出すのを趣味としている人々がいる。
十万もの価格で販売されているイリスアゲート。
見た感じ、博物館級といえるものではない。
高すぎると言わざるを得ない。
お金に代わる時間があるという方は是非、街へハンティングに出かけてほしい。
ただし、まずは一度、現物を見る必要がありそうだ。


158×75×5mm  102.5g

2012/11/30

フォーダイト


フォーダイト Fordite
Ford Rouge Plant, Detroit, Michigan, USA



フォーダイト、またの名をデトロイト・アゲート。
キラキラ輝くラメ状の細かな粒子、鮮やかな色合い、独特の模様が楽しめる。
アゲート(めのう)でないのは一目瞭然。
その正体は、米国はフォード社の自動車工場で塗装に用いられたラッカーだという。
しかしながら自動車には全く興味のない自分には、フォードが一体何なのかわからない。
アメリカの歴史に深く関わり、単なる民間企業の枠を超えた伝説的存在のようだ。
必死で調べたことをまとめたのが以下。



米・デトロイトに本社を置くフォード社は、ヘンリー・フォードという人物により1903年に創業された自動車メーカー。
100年以上に渡って世界の業界をリードしてきた会社で、戦争や不況といった困難を乗り越え、現在も存続しているという。
いわゆる「流れ作業」を最初に取り入れたのもフォードであったとのこと。


流れ作業といえば、子供の頃に観たチャップリンの映画。
あまり良いイメージではないのだが…
それはさておき、この不思議な宝石の産地は、工場での塗装部門。
1940年~80年代にデトロイトの工場から出た副産物をリサイクルして出来たのが、フォーダイトということになるようだ。
フォード社では、長い間ラッカーを用いた車体の塗装を行ってきた。
流れ作業において飛び散ったラッカーが積もり積もって、フォーダイトの原形(→写真はこちら)が完成した。
たまたまカットしたところ見事な宝石になったため、噂が噂を呼んで、広まっていったようである。

現在工場は閉鎖され、国外へ移転している。
80年代を最後に塗装の方法も変更になった。
今後中国以外から出てくることは無い。
あるときを境に消えたという神秘性や、カットして初めてわかったその美しさと偶然性こそが、フォーダイトの魅力といえよう。
こんなものを宝石にカットしようと思った人がいたのは驚きである。

工場からの副産物といえば、ジンカイトやスウェデッシュブルーが有名である。
スウェデッシュブルーと異なるのは、産出場所や埋蔵量(?)が特定できるため、いつ市場から消えるかもはっきりしているということ。
1940年代の古い素材を用いたフォーダイトは、モノクロに近いシックな印象で、数が少ないために希少価値が付くのだそう。
写真のフォーダイトはサイケデリックな色彩が好まれた70年代のフォーダイトのカット品で、同じ塊からカットされたものと伺っている。
最末期の80年代のカット品は、時代を反映した派手な色合いが特徴で、市場に出回っているものの大半がこれにあたるらしい。

こんな個性的な色を自動車に使っていたというのは、考えてみれば不思議なこと。
国産車は高級品になるほど白や黒、シルバーといった無難な色になる。
60~70年代のベンツなど、欧米の車に見られる、芸術性の高いカラーリングやデザインには、車に興味のない私でさえ感動を覚える。
ヴィンテージの車を愛する知人が多い私は恵まれている。
国産車にそういった美意識が皆無なのは、自家用車における歴史が浅いこと、個性より効率を重視した結果といえるかもしれない。

思うに多くの日本人は、車に芸術性など求めないのであろう。
空調やカーナビゲーション、イミテーションの毛皮などは、自動車には本来必要のないものである。
ましてや安全確認のおそろかになるテレビ、他車の走行を妨げる過剰なイルミネーション、騒音を奏でるオーディオなどを積むのは、不幸な事故につながる危険行為に他ならない。
車は人の命を一瞬にして奪う。
不幸な事故を極力避け、通行人に不快感を与えないよう、芸術性にこだわるべきである。
それができない者には軽トラの利用が適している。

話が逸れてしまった。
フォーダイトには自動車文化を彩ってきた遊び心が詰め込まれている。
米国ではアクセサリーとして人気も高い。
今後ヴィクトリアストーン同様、中国からの模造品が出回ることが危惧されるから、興味のある方はお早めに手にしていただきたい。


40×25×5mm, 31×30×5mm  計10.25g


この度は多くの皆さまにオークションにご参加いただきました。
本当にありがとうございました。
皆さまの温かいメッセージに涙し、励まされ…
オークションも最終段階に入りました(なんと、まだ終わっていなかったんですね!)

最後まで全力で頑張ります。
この場を借りて、皆さまにお礼申し上げます。
次回は池袋にてお会いしましょう(フォーダイトも参ります)!

2011/09/27

ピーターサイト


ピーターサイト Pietersite
Outjo, Damaraland District, Kunene Region, Namibia



ピーターサイトの塊。
濃紺色で描かれた抽象画のような、なにものにも喩えがたい独特の模様。
カットすると、まるで台風の目のようにみえることから、テンペスト・ストーン(嵐の石)とも呼ばれている。

その正体はクロシドライト(青石綿)。
猛毒として知られるだけに、驚かれる方もおられるかもしれない。
こちらはめのう化して固まっており、危険物が飛び散る心配はない。
一般には、クロシドライトを含んだ石英(ブルータイガーアイ)が地殻変動によって粉砕され、ふたたび浸透した石英によって、鉱物として蘇ったものとされている。

意外に知られていないが、タイガーアイやブルータイガーアイはクロシドライトから成る鉱物である。
青いクロシドライトが酸化してゴールドになったものがタイガーアイ。
両者は通常、混ざることはない。
しかし、いったん粉砕されたのちに形成されるこの石の場合は、青とゴールドが混ざり合った状態で発見される。
純粋な濃紺色は、原産地でもあるナミビア産のみに見られ、非常に高額で取引される。
なお、ゴールド~赤茶系のピーターサイトは、中国河南省から産出するもの。
ナミビア産とは成分が若干異なるらしい。
ピーターサイトには含めない、としているところも。
1962年に発見されたばかりの比較的新しい鉱物であり、その定義ははっきりしていないのかもしれない。

写真のピーターサイトは、昔たいそう気に入って手に入れた、大きな塊状の原石。
ところどころ酸化していて、濃紺色の嵐がうずまくさまが確認できる。
通常はカボション・カットされたり、ビーズなどで流通するピーターサイトだが、原石の美しさもなかなかのもの。
ちなみに、何も飛び散った形跡がないので、このままの状態で問題ないと思われる。

ジャンルを問わず広く日本人に愛されているタイガーアイ。
成分は同じであるものの、ピーターサイトのほうはヒーリングストーンとしての色合いが濃い。
シャーマニック・トラベルに欠かせない存在として知られているほか、瞑想にも向いているそうだ。
自分自身と向き合うための石でもある。
嵐の中にあっては、前も後ろも見えず、混乱し、何も考えられなくなってしまう。
しかし、台風の中心は、実に平穏なのだ。
安らぎと平和に満ちた世界に立ち戻ることによって、本来の自分自身を取り戻し、物事の本質をより深く理解することができるようになる。

先日、生まれて初めて石のブレスが千切れた。
ピーターサイトのブレスだった。
波乱万丈な運命に嘆く人に捧げる石である。
日常生活が波乱万丈すぎたのか。
いや、物事を見誤り、いつの間にか嵐の渦中を外れて、自ら突風に飛び込んでしまっていたのかもしれない。


約150g(未測定)

2011/08/17

アゲート


アゲート Banded Agate
Tesoro Escondido, San Rafael, Mendoza, Argentina



意外なところにお宝は転がっている。
Tesoro Escondido Agateと呼ばれる縞瑪瑙の一種。
有名なコンドル・アゲートの産地にほど近い、険しい山中から、一昨年発見されたという。
「Tesoro Escondido」は、現地の言葉で、隠された財宝という意味らしい。
薔薇の花のような鮮やかで情熱的な色彩、まさにアルゼンチン。

海外、特にアメリカなどでは、アゲートやジャスパーの収集が盛んで、専門のコレクターも少なくない。
産地や模様によってさまざまな名称がつけられ、高値で取引されている。

一般的には、透明~半透明で無地のものをカルセドニー、縞模様などがみられるものをアゲート(めのう)、不透明で色濃いものをジャスパーと呼んでいる。
いずれも石英の仲間にあたる。

着色加工されたものが出回りすぎているからだろう。
ビーズがその典型。
オニキス、サードオニキス、カーネリアン、ニュージェード、シーブルーカルセドニー、グリーンアゲート、ピンクジェード、レインボーカルシリカ、アイアゲート(天眼石)、各種天珠などなど。
これらは特に記載がなければ、着色加工されたカルセドニーやカルサイト、もしくは同程度の価格の岩である。

ナミビアのブルーカルセドニー、メキシコのファイアーアゲートなどは別格として扱われているし、南アフリカのブルーレースアゲートは年々希少価値が高まっているが、それ以外はあってないようなもの。
過小評価されて然りだと思う。
クリスタルヒーリングに使うなど、言語道断である。
使われたほうの身になってみろ。
本気で腹立つぞ。

北海道の礼文島に、めのう海岸なるものがある。
以前訪れたときは時間がなく、最終日の朝方拾いに行くつもりだったが、やはりというか寝坊した。
土産物屋にないものかと覗いてみた。
まるでヤフオクかと見紛うような、赤や青に彩られた、毒々しい染め瑪瑙のプレートが、不当な価格で並べられていた。
どう考えても、めのう海岸で拾ったとは思えない。

売り場のあちこちに、不透明な白い塊が、コロコロと転がっている。
店の人に聞いたら、めのう海岸から採れた正真正銘の北海道産めのう(正式にはカルセドニーか)であるということだった。
ただ同然で譲ってもらった。
もう少し価値をつけてあげてもいいのではないかと思った、北海道の夏の日の朝。


45×30×30mm  54.9g

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?